2026-11-01
Audacityでノイズ除去するやり方|設定値とこもる時の対処
Audacityのノイズ除去の手順と3つのスライダーの設定値、声がこもる・プチプチする時の対処を解説。ノイズサンプル不要のAIツールが楽な場面も紹介します。
Audacityでノイズを消すには、「エフェクト」メニューの「ノイズの除去と修復」→「ノイズ除去」を使います。作業は2段階です。まずノイズだけが鳴っている数秒を選んで「ノイズプロファイルを取得」を押します。次に処理したい範囲全体を選び直し、同じエフェクトをもう一度開いて「適用」を押します。エアコンやPCファンのように一定のノイズにはよく効きます。ただし設定を上げすぎると、声がこもったりロボットのような音になったりします。
Audacity 4と3.7ではメニュー名が少し違う
2026年9月に公開されたAudacity 4.0で画面が新しくなり、日本語の表記もいくつか変わりました。ノイズプロファイルを使う仕組みと3つのスライダーは同じなので、お使いのバージョンに合わせて読み替えてください。
| 項目 | Audacity 4.0以降 | Audacity 3.7まで |
|---|---|---|
| メニュー | 「エフェクト」→「ノイズの除去と修復」→「ノイズ除去」 | 「エフェクト」→「ノイズ除去と修復」→「ノイズを低減」 |
| ステップ1のボタン | 「ノイズプロファイルを取得」 | 「ノイズプロファイルを取得」 |
| 削減量のスライダー | 「ノイズを除去」(dB) | 「ノイズ低減(dB)」 |
| その他のスライダー | 「感度」「周波数平滑化」(バンド) | 「感度」「周波数平滑化(バンド)」 |
| 消える音だけを聴く | 出力の「ノイズのみ」 | ノイズの「残差」 |
| 実行ボタン | 「適用」 | 「OK」 |
| 全体を選択 | 「選択」→「すべてを選択」(Ctrl+A) | 「選択」→「すべて」(Ctrl+A) |
以下はAudacity 4の表記で説明します。
Audacityでノイズを除去する手順
- ノイズだけの部分を選択する。 録音の冒頭や話の合間など、声が入っていない部分をドラッグで数秒選びます。公式マニュアルによると最低2048サンプル(44.1kHzで約0.05秒)が必要で、長いほど精度が上がります。息継ぎや「えー」が混ざらないようにするのがコツです。
- ノイズプロファイルを取得する。 「エフェクト」→「ノイズの除去と修復」→「ノイズ除去」を開き、「ステップ1」の「ノイズプロファイルを取得」をクリックします。Audacity 4ではここでダイアログが自動的に閉じますが、正常な動作です。
- 処理したい範囲を選び直す。 ファイル全体にかけるなら「選択」→「すべてを選択」(Ctrl+A)を使います。
- もう一度「ノイズ除去」を開いて調整する。 「ステップ2」の3つのスライダーを動かし、「プレビュー」で数秒聴きながら決めます。
- 「適用」を押す。 Audacity 3.7では「OK」です。
調整中は、出力を「ノイズのみ」(3.7では「残差」)にしてプレビューするのがおすすめです。これから消される音だけが聞こえるので、そこに声がはっきり混じっていれば削りすぎだとわかります。確認が終わったら「ノイズを除去したオーディオ」(3.7では「低減」)に戻してから適用してください。戻し忘れると、ノイズだけが残ったトラックになってしまいます。
録音の途中でノイズの種類が変わる場合は、公式マニュアルのとおり、種類ごとにプロファイルを取り直してその範囲だけにかけます。なお、短いノイズをコピーしてつなげ、長いサンプルに見せかけても効果はありません。
3つのスライダーの意味と初期値
| スライダー | 初期値 | 範囲 | 値を上げると |
|---|---|---|---|
| ノイズを除去(dB) | 6 | 0〜48 | ノイズがより小さくなる。ただし残したい音も傷みやすい |
| 感度 | 6 | 0〜24 | ノイズと判定される音が増える。上げすぎると声の一部まで削られる |
| 周波数平滑化(バンド) | 6 | 0〜12 | 処理が隣の周波数にも広がり、チリチリした残りかすが目立ちにくくなる。上げすぎると声の明瞭さが落ちる |
最初は初期値のままプレビューしてみてください。初期値はかなり控えめな設定です。
- ノイズが残る場合は、「ノイズを除去」を2〜3 dBずつ上げて聴き比べます。公式マニュアルでも、ノイズが気にならない程度まで下がる、最小の値を使うよう勧めています。
- 処理後にチリチリ・キラキラとした細かい音が出る場合は、「感度」を少し上げます。
- 話し声が中心なら、「周波数平滑化」は初期値の6前後で問題ありません。マニュアルでは、低めの値は音楽向き、高めの値は話し声向きとされています。
設定を変えずに別の範囲へ同じ処理をかけたいときは、範囲を選んでCtrl+R(MacはCmd+R)を押すと、直前のエフェクトを繰り返せます。
声がこもる・ロボット声になる原因と対策
ノイズ除去後に声がこもる原因は、たいてい次のどれかです。
- 削減量が大きすぎる。 「ノイズを除去」のdBを上げるほど、声の成分も一緒に削られます。
- 感度が高すぎる。 声の一部までノイズと判定されます。特に「サーッ」というホワイトノイズは高い音域に広がっていて、サ行などの子音や息の音と重なります。強く削ると子音が丸ごと削れて、こもった声になります。
- ノイズプロファイルに声や息が混じっている。 選んだ範囲に声が入っていると、その音域の声まで消されます。
- ノイズが声に比べて大きすぎる。 マニュアルにもあるとおり、声がノイズより十分に大きくない録音や、ノイズの周波数が声と近い録音では、満足な結果が得られないことがあります。
一方、「ロボット声」「水中で話しているような音」「チリチリした細かい音」は、マニュアルでmusical noiseなどと呼ばれる残りかすです。短い音がランダムに鳴る現象で、感度が低すぎるときや、プロファイルが録音全体のノイズを代表していないときに起きます。
対策は次のとおりです。
- 「ノイズのみ」で聴いて声が混じっていたら、「ノイズを除去」か「感度」を下げる
- 声も息も入っていない部分から、プロファイルを取り直す
- チリチリが出たら「感度」を少し上げるか、「周波数平滑化」を上げる
- 完全な無音を目指さない。少しノイズが残っても、話している間はほとんど気にならない
- コンプレッサーなど音量差を縮めるエフェクトは、ノイズ除去の後にかける(公式マニュアルの推奨。先にかけるとノイズも持ち上がります)
ノイズ除去が苦手なノイズ
公式マニュアルでは、「ノイズ除去」は単発のクリックやポップノイズ、車の音や観客のざわめきのような不規則なノイズには向かないと明記されています。それぞれ別の対処が必要です。
プチプチ・パチパチ(クリックノイズ)
録音そのものにプチプチが入っている場合は、同じ「ノイズの除去と修復」にある「クリックノイズを除去」を使います。範囲を選んで開き、まずは初期値のままプレビューしてください(Audacity 4の初期値は「しきい値」200、「最大スパイク幅」20)。しきい値は小さいほど、最大スパイク幅は大きいほど敏感に反応します。選択範囲は4096サンプル以上必要です。
単発のプチッという音なら、波形を拡大してその部分だけを選び(128サンプルまで)、「修復」を使う方法もあります。レコードのような細かいパチパチが続く場合は、公式サポートによると「ノイズ除去」のほうがうまくいくことがあります。
ノイズ除去をかけたあとにプチプチ、チリチリと聞こえるようになった場合は、前の章で説明した残りかすの可能性が高いです。感度と周波数平滑化を見直しましょう。
リップノイズ
口の中で鳴る「ペチャ」「チッ」という音は、声と同時に出る短い音です。一定のノイズを前提にした「ノイズ除去」では消せません。「クリックノイズを除去」もリップノイズ専用の機能ではないため、目立つものは波形を拡大して1つずつ処理するのが確実です。ごく短いものは「修復」を使い、それ以外は該当部分だけ音量を下げます。
ハム(ブーンという低い音)
電源由来のハムなら、「エフェクト」→「イコライザとフィルタ」→「ノッチフィルタ」(3.7では「イコライザーとフィルター」→「ノッチフィルター」)で特定の周波数だけを削れます。電源周波数は東日本が50Hz、西日本が60Hzです。倍音(100Hz、150Hzなど)にも重ねてかける必要がある場合もあります。マニュアルでは、ノッチフィルタやクリックノイズの除去は「ノイズ除去」より先に行うよう勧めています。
ノイズゲートで「無音部分」だけ静かにする
「ノイズの除去と修復」にある「ノイズゲート」は、しきい値より小さい音だけを下げるエフェクトです。声の部分には手を加えません。ノイズだけの範囲を選び、「機能選択」で「ノイズレベルを解析」を実行すると、目安のしきい値がわかります。次に全体を選んで「ゲート」に戻し、「ゲートしきい値(dB)」(初期値-40)と「レベル低減量(dB)」(初期値-24)を調整します。
話していない間の静けさは改善しますが、声に重なっているノイズは消えません。公式サポートでは、ノイズ除去を弱めにかけてからノイズゲートを使う組み合わせを勧めています。
AIツールのほうが楽な場面
Audacityのノイズ除去は無料で細かく調整できますが、ノイズプロファイルを取れることが前提です。次のような場合は、AIでノイズを除去するツールのほうが早く終わります。
- 最初から最後まで話していて、ノイズだけの区間がない
- 外の車の音やエアコンのオンオフなど、途中でノイズが変わる
- 直したいのが動画の音声。Audacityは音声編集ソフトなので、音声を取り出して処理し、動画編集ソフトで差し替える手間がかかります
- 会社のPCなどで、ソフトをインストールできない
AudioCleanは、オープンソースのAIモデル(DeepFilterNet3)で声とノイズを分けるブラウザ用ツールです。ノイズのサンプルを用意する必要はなく、途中で変わるノイズにもある程度追従します。ただし一番得意なのは、Audacityと同じく一定のノイズ(ハム、サーッという音、ファン、エアコン、交通音)です。
- ブラウザでAudioCleanのノイズ除去ツールを開きます。
- ファイルをドラッグ&ドロップします。音声(MP3、WAV、M4A、FLACなど)だけでなく、動画(MP4、MOVなど)もそのまま入れられます。
- レベルを選びます。軽いノイズなら「軽度」、たいていの録音は「中程度」、かなりうるさい録音は「強力」が目安です。最大の削減量はそれぞれ20 / 50 / 100 dBです。
- 「オリジナル」と「ノイズ除去済み」を切り替えて聴き比べ、問題なければダウンロードします。声がこもると感じたら、ファイルを入れ直さずにレベルを下げて処理し直せます。
処理はお使いの端末のブラウザ内で行われ、ファイルはサーバーにアップロードされません(詳しくは処理の仕組みとプライバシーをご覧ください)。ただし、ページとAIモデルを読み込むためにインターネット接続は必要です。動画の場合は、映像はそのままで音声だけを差し替えて書き出します(動画のノイズ除去)。PCファンやエアコンの音が中心なら、ファンノイズの除去のページも参考になります。
AIでも直せないものはあります。部屋の反響(エコー)、音割れ(クリッピング)、後ろで話している別の人の声は消せません。リップノイズも声の一部として残ることが多いです。また、ZoomやDiscordなどの通話・配信中にリアルタイムでノイズを消す機能はなく、録音済みのファイルを後から整えるためのツールです。
両方を組み合わせる方法もあります。先にAudioCleanで背景ノイズを落としてWAVやFLACで書き出し、そのファイルをAudacityで開いてカットやリップノイズの処理をすれば、それぞれの得意な部分を活かせます。
AudacityとAudioCleanの比較
| Audacity | AudioClean | |
|---|---|---|
| 料金 | 無料(オープンソース) | 無料プランあり(1ファイル10分・300MBまで、ダウンロードは1日5回、登録不要)。有料プランもあり |
| 使う場所 | PCにインストールして使う。オフラインでも動く | ブラウザで使う。インターネット接続が必要 |
| ノイズのサンプル | 必要(ノイズプロファイル) | 不要 |
| 得意なノイズ | 一定のノイズ(ファン、ハム、サーッという音) | 一定のノイズ。変化するノイズにもある程度対応 |
| 調整の細かさ | 3つのスライダーに加え、クリックノイズ除去、ノッチフィルタ、ノイズゲートを組み合わせられる | 3段階のレベルから選ぶのが基本。Audacityほど細かくは調整できない |
| 動画 | 音声だけを扱う | 動画をそのまま入れて、音声を差し替えて書き出せる |
| 編集機能 | カット、音量調整など一通りの編集ができる | ノイズ除去が中心 |
| ファイルの扱い | 自分のPC内で処理 | 自分の端末のブラウザ内で処理(アップロードしない) |
よくある質問
Audacityのノイズ除去はどこにありますか?
Audacity 4では「エフェクト」→「ノイズの除去と修復」→「ノイズ除去」、Audacity 3.7までは「エフェクト」→「ノイズ除去と修復」→「ノイズを低減」にあります。
「ノイズプロファイルを取得」を押したら画面が閉じました。失敗ですか?
失敗ではありません。Audacity 4では、プロファイルを取得するとダイアログが閉じる仕様です。処理したい範囲を選び直してから、もう一度「ノイズ除去」を開いてください。
ホワイトノイズ(サーッという音)を消すと声がこもります。
ホワイトノイズは子音や息の音と同じ高い音域にあるため、強く削ると声の輪郭も一緒に削れます。「ノイズを除去」と「感度」を下げ、「ノイズのみ」で聴いたときに声が混じらない範囲で止めてください。完全に消そうとしないことが一番の対策です。
おすすめの設定値はありますか?
まずは初期値(ノイズを除去6 dB、感度6、周波数平滑化6)から始めて、ノイズが残るぶんだけ「ノイズを除去」を少しずつ上げるのが安全です。どの録音にも合う決まった数値はないので、プレビューで聴いて決めてください。
ノイズだけの部分がない録音はどうすればいいですか?
Audacityの「ノイズ除去」はプロファイルが必要なので、ノイズだけの区間がないと使いにくくなります。その場合は、サンプルが要らないAudioCleanのようなAIツールを試してみてください。無料プランなら10分までのファイルを登録なしで処理できます。
AudioCleanはZoomやDiscordの通話中にも使えますか?
使えません。AudioCleanは録音済みのファイルを処理するツールです。通話中のノイズは、各アプリのノイズ抑制機能で対処してください。録音したファイルなら、後からAudioCleanで整えられます。